『波うつ土地』 富岡多恵子

■日記
「僕達の青春はどこに行ったの」とは、高橋源一郎さんの本に出てくる言葉だけど、私もそう思うと言っていたのは岡崎京子さんですが、僕もそう思います。


社員食堂でやきそばを500円で売っていた。
はらがたった。
ぜったい、高い。


■『波うつ土地』富岡多恵子 →感想、100/100点
パック・ツアーじゃないと金がかかってかなわないですよ、と男がざっくばらんにいい、今までの旅行の体験や、高いだけで満足できなかった旅館や食べものの話でもしてくれたらどんなにいいだろう。
サラリーマンには、とてもじゃないがおもしろい旅行なんてできませんよ、とでもいってくれたら話もはずむのだ。


冗談っぽく喋っているうちになにか手がかりをつかむようにハナシを誘導しようとするのだが、相手は素気なく拒否する。
その拒否があまり重なると、それが謙虚からくるようには、私には感じられなくなってくるのである。相手の気分を悪くさせぬように気をつかっての遠まわしの問いかけがその度に顔にとまるハエみたいに追い払われると、鈍感とか無礼とかを、だんだんに感じてしまう。それとも、きわめて自閉的な人間なのか。冗談に反応しないのは相当アタマが悪いからではないか。なんてついに腹立ちまぎれに思ったりするのである。


■『さらば愛しき女よレイモンド・チャンドラー/著、清水俊二/訳 →感想、75/100点
この仕事から好奇心を除いたら、何も残らない。しかし、正直のところ、私は一カ月、仕事をしていない。金にならない仕事でも、仕事がないよりはましなのだった。


「あの男も人間だぜ、俺たちと同じ人間なんだ。悪いこともするが、人間だよ」


私は酒が必要だった。多額の生命保険が必要だった。休暇が必要だった。田舎の別荘が必要だった。
しかし、私にあるのは、上衣と帽子とピストルだけだった。私はその三つをからだにつけて、部屋を出た。


■『スタッズ・ターケル自伝』 →感想、70/100点
ほら、「感受性(フィーリング・トーン)」と呼ばれているものよ。
もちろん、いいものもいやなものも感じ取るでしょう。
でもね、感受性がない人間はおしまいよ。
―ナンシー・ディッカーソン