ケンタとジュンとカヨちゃんの国


安藤サクラがよかった。
安藤サクラ高良健吾にブスと言われまくる。彼のアヒル口から発せられるとひどい言葉もかわいらしく聞こえる。方言をしゃべる人間に感じるかわいらしさ。つたない話し方は、子どもが言ってはいけないことをわかっていながら面白がって言っているような印象を与える。言いにくいけれど本当のこと、が語られているような気になる。だから、彼が言う「ブス」と繰り返すシーンは、見てはいけないものを見たような気持ちになった。
安藤サクラが駐車場で置き去りにされるシーンがある。バッグの中身を道路にぶちまけられて、置いていかれる。安藤サクラは荷物の前でしゃがみこむ。動かない姿が執拗に描かれる。この場面を説明をするだけならもう次のシーンに行ってもよさそうなのにうなだれる彼女を延々と撮る。
ラストシーンでも荷物と一緒に安藤サクラは、他の男に車から投げ捨てられる。


柄本明が殴られたシーンにも同じように一つの出来事をひつこく追う箇所があった。柄本明新井浩文に殴られる。そのシーンは比較的すぐに終わる。次の日に、柄本明は、自分の部屋で一人で口のなかの血を吐き出す。このシーンは一瞬で終わる。けれど、血がだらりとステンレスに落ちていくのを、実際に流れる時間より長く感じた。


○3人組のロードムービーということで「理由なき暴行」を思い出しながら見ていた。終盤に拳銃が出てくるところなどからも、そう思った。でも、外圧が弱いところが違う。どうしようもならない鬱屈は、今の方がうすい気がした。
・裕也は簡単に死んでしまうし、弱い。・キャンプをしていた若者たちにからまれるが、彼らもあっさりケンカに負ける。
追っかけてくるのは、弱い裕也で、からんでくるのはいかにも弱そうな3人の若者たちだ。理由がなかったり、意味もなく殺されたりする理不尽さは、彼らの身のまわりにはない。でも、登場人物は「理由なき暴行」の登場人物たちと同じように、苦しそうだ。


みんなが誰かを求めている。ケンタはカズを求めて、ジュンはケンタを求めて、カヨちゃんはジュンを求める。でも、うまくいかない。求められることに対してうまく対応できない。カズにいたっては誰かを求めることなくケンタを拒絶する。



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最近好きな映画はこんな感じ。「バッシング」「愛のむきだし」「14歳」「エヴァンゲリオン」「ダージリン急行」「オールド・ボーイ」「空気人形」。
もっと無茶苦茶な映画が見たい。