宮本百合子「伸子」
〈「私ね……考えたの。……若し結婚するなら……私は……」
佃は、打たれたように体をのばし、ぐっと両手で伸子の顔をはさん(※)で自分の前へ持ってきた。
伸子は涙でぐっしょり濡れ、上気し顫えながら、懺悔する子供のように一気に云い切った。
「あなたとでなければいや」〉


〈一人の人間として、自分が愧じ卑しむ行為をも、それが夫だというばかりに共犯者になることは、伸子には堪え難かった。〉

      • 人を好きになって結婚をして、それから別れるまでの心の動きが本当によく分かる。長い小説ということもあり、時間をかけて、ちょっとずつちょっとずつ別れる方へと傾いていく心の動きが、何ページにもわたってこまやかに書かれている。
      • 夏目漱石「こころ」と同じ時期に、読んだ。「伸子」の方が好きだ。漱石堅苦しい感じがして、宮本百合子は活き活きとした感じがした。例えばこんな箇所。

〈そして、伸子の方に、いやに心得ているという風な笑いを含んだ横眼を使った。何といやな婆!〉


          • -

アフリカの女王
チャーリー:俺は情けない男だ
ロージー:あなたは勇敢な人よ 少し働きすぎたの 今は眠ったほうがいいわ 体を楽にするの ゆっくり眠って 目が覚めたら進めばいいわ

          • -

「ぼくの大好きな先生」
女の子:わたしの夢にオバケは出てこない

先生:アクセルに夢の話を聞いているんだよ
邪魔をしないで黙って聞きなさい
夢にオバケが出てきたんだね

男の子:うん

先生:それから? 何か着てた?

男の子:白い服
先生:本物みたいに?
男の子:うん

      • 先生の口調に冷たい印象を受けた。字幕の訳が、もう少し柔らかかったら違ったかもしれない。